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アメ村マンガ研究所

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日曜マンガ博物館(7)ネオファウスト

日曜マンガ博物館
第7回


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ネオファウスト

(未完)
(手塚治虫・講談社手塚治虫文庫全集・977円)



1988年から連載が開始され、1989年に手塚治虫が死去したことによって未完となってしまった作品です。ゲーテの戯曲「ファウスト」を土台にしており、最晩期の作品ながら手塚作品の中では人気は高い。

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<あらすじ>
1970年代の学生運動真っ只中、ある大学「NG大学」の老教授・一ノ関教授は「時代」と「自分の不甲斐なさ」を嘆き、自ら命を絶とうと思っていた時に、美しき悪魔・メフィストが現れる。魂と引き換えに、「若さ」を与える契約をしてしまう。記憶をなくし、若者に生まれ変わった「彼」は気づけば高度経済成長真っ只中の昭和30年代にいた。メフィストに言われるまま、大実業家坂根第造を暴漢から助ける。気に入られた「彼」は養子となり、坂根第一と名付けられ、彼の後継者となる。養父第造の死後、莫大な遺産を受け継ぐ。街で出会った女の子に付いて行った先は「NG大学」。そこで「自分」である「一ノ関教授」に出会う。何かが始まり、何かが狂い、何かが終わる・・。

この後何かと色々あって(ここは省きます)、第1部が完了するのですが、第2部は結局語られることなく彼の死去で未完となってしまう。

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このマンガは戯曲「ファウスト」を下地としながらも、当時の先端技術で最大の関心事「クローン技術」や日本の高度経済成長や学生運動の時代を描いており、手塚治虫にとっても意欲作で、自らが何かを発信しなければならないという思いの強かった作品だと思われます。

まあ、未完ということで全てが推測で結末を知るすべはありませんが、彼が人間の欲と罪を正面から描きたかったというのは、この時代の手塚作品に共通した思いです。

未完といえば他にも「ルードヴィッヒ・B」もあり、こちらも歴史ものとはいえ、想像だけが大きく膨らんでいきます。ですが、「ネオ・ファウスト」は何ページか、絵コンテやネームが収録されていて、それらを手がかりにすればより壮大な作品だったのではないかと思われます。手塚作品のもうひとつの楽しみ方ですね。
by manga_do | 2012-04-29 00:00 | 日曜マンガ博物館
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