日曜マンガ博物館
第2回
<はじめに>
毎週日曜日は、マンガの新作レビューでなく、古今の名作や伝説の漫画家、ずっと語り継いでいきたいマンガにまつわる話など、アーカイブ的なコーナーを開設することにしました。その名も「日曜マンガ博物館」。
その第2回目は・・
プラモ狂四郎
(やまと虹一・クラフト団・講談社・1982年に1巻刊行)
(現在、漫画文庫全10巻刊行中)
<あらすじ>
プラモデル、特に
ガンプラが好きな小学生・京田四郎は行きつけの模型店「クラフト・マン」のマスターに、自分の作ったプラモデルを使って仮想空間で戦う
「プラモシュミレーションマシーン」をやってみないかと誘われる。自分の作ったプラモデルが本当の戦場にいるみたいに動き、戦い、そしてダメージを受ける。そんな世界にドハマリしていく。数々のプレーヤーと戦い、ついには自分専用のガンダムを設計、製作していくまでに至る。そして、日本を代表するプレーヤーと成長していく。
1982年と言えば空前の
ガンプラブーム。誰もがおもちゃ屋さんに列をなし、ガンプラを買い求めた時代。そんな時にガンプラを仮想空間とはいえ、自分の作った仕様で戦わすことができるマンガ。大「プラモ狂四郎」ブームが発生します。
プラモ狂四郎は一見荒唐無稽な夢話と思いきや、プラモをこう改造すれば良くなるよ、こういうプラモの特徴があるから戦闘には有利なんだ、といった具合にあくまでも、徹底して現実世界のガンプラ講座みたいなものとリンクしていたのです。だから、お話の戦闘もそうですが、その改造ポイントに熱狂していましたね。
そういう意味でも、このマンガは漫画の面白さだけでなく、ガンプラの知識、プラモデル製作の腕、造形欲などが総合的に絡み合っているマンガでした。実際、「ストリームベース」というプラモデルのモデラー集団が作中に登場する等、その総合力は当代随一のガンプラの頭脳が当時集結していたのではないでしょうか。
この漫画の影響はその後も続きます。この雑誌の連載されていた
ボンボン、講談社は「ガンダム」に強い、ということでその後のガンダム作品のコミカライズをほとんど手がけ、「MSV」と呼ばれるガンダムのモビルスーツの別シリーズまで立ち上げるに至りました。
ここで連載雑誌
「ボンボン」について。小学館の「コロコロ」に対抗して立ち上げられた「ボンボン」は1981年生まれ。「ドラえもん」を中心とした王道子供向け漫画のコロコロに対して、ガンダムを軸とした連載と、今では確実にNGなお色気マンガ(小学生向けとはいえ、かなり過激だった記憶が)の両輪で行っていましたが、その後90年代後半の「コロコロ」連載の「ポケモン」が子供向け2大巨頭を、コロコロの一人勝ちへと変化させていきました。ゲーム機、ゲームキャラ、おもちゃ、おもちゃを題材にしたマンガ。といった具合にその時代の流れを読み取っていくコロコロに対して、その後追いに終始してしまったボンボン。頼みの綱のガンダムもファンの高齢化とオタク化が進み、子供向け漫画での仕様ではなくなってしまいました。
プラモ狂四郎もその流れに逆らうことができずに、その後「新プラモ狂四郎」を開始するも1988年に終幕してしまう。しかし、ガンダムのデザイン、モビルスーツの世界には大きな影響を与えています。主人公四郎のオリジナルガンダム、
「パーフェクトガンダム」は当時の小学生の憧れの的であり、直接ガンダム世界に登場しないのに、後にプラモ化されるという快挙を成し遂げます。当時のガンプラを作っていた少年たちの「代弁者」としての狂四郎の存在はその当時の「創造性」に大きく寄与したと思います。
さあ、もう一度読み返しますか。お、手元にあるやんか。なんか図ったようなタイミング。どれどれ・・・