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アメ村マンガ研究所

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日曜マンガ博物館(29)鳥山明のメカデザイン

日曜マンガ博物館
第29回



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鳥山明のメカデザイン


「ドラゴンボール」「Dr.スランプ」など今更説明の余地がないこの方、鳥山明が今回のメインテーマです。

鳥山明の面白さとかの議論はいまさらする必要がないのですが、私はこの方の作品でいつも気になるのが「メカ」です。
秀麗な描き方をするメカやかなりのデフォルメが入ったメカや何かをベースに作っているのだけど、ベースより格好良かったり、可愛くなっていたりなどなど。

今回はそんな鳥山明の「メカデザイン」にこだわってみます。
元々、鳥山明はミリタリーや車などに造詣が深く、それを彼らしくあの愛らしいキャラ達と混ぜて描いているというギャップが独自の世界や格好良さを演出しているのだと思います。

今回のメインで使っているアラレちゃんとキャラメルマン4号ことオボッチャマンくんが乗っているのは、ナチスドイツ時代の「ケッテンクラート」という前がバイクで後ろがキャタピラという乗り物です。悪路でも進めるバイクという位置づけでした。が、実際は操作が難しくキャタピラで動く小さな戦車を、バイクのハンドルで操作するというものでした。でも、その愛らしい格好に日本だけでなく世界中にファンがいる「逸品」です。そんなものを登場させるところも鳥山流ではないでしょうか。



彼のメカ作画にはいくつかの特徴があります。①デフォルメ、②リアリティー、③パロディー、④オリジナルの4つに分けられます。

ここではその4つに迫りたいと思います。
まずは

①デフォルメ

これはよく出てくる画で、実際の戦闘機をずんぐりむっくりにしたり、ありあえないペイントにしたり、擬人化したりなどです。




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これはかなり初期、アラレちゃんで初めてくらいに書かれたメカカットで、アラレちゃんが2頭身キャラでなかったり、作者自身のキャラが「鳥」だったりとかなり初期の頃です。写っている戦闘機は「P-51マスタング」で、第二次世界大戦のアメリカでの絶対的エース機でした。その運動性能や信頼性は今でも伝説です。でも、そんな先鋭的なところを一切感じさせないこの描かれ方、しかも、マスタングという名前は「野生化した馬」という意味があって、だから戦闘機を馬として扱っているというのは、当時20代前半の若者漫画家の所業とは到底思えない「すごさ」です。



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これも面白いカットですね。フィアットの「panda」というコンパクトカーなのですが、助手席にパンダがのっていたりして・・。



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アラレちゃんの最初の方に出てきた、いろんなものに化けて人を脅かすドンベが遠くに逃げる時に飛行機に変身したのですが、化けたのが世界で初めて実用的に飛行したロケットエンジン戦闘機「Me-163コメート」というのはいろんな意味で面白いです。コメート(彗星)の名前とは裏腹に「最初」にはつきもののいつ爆発するかわからない危険な戦闘機として、利より害の方が多かった悲劇の戦闘機です。そこに目をつけたのはやはりこのフォルムがその悲劇的なところを打ち消してくれるからではないでしょうか。



②リアリティー

そのメカの造詣の深さから、リアリティーは漫画随一と言っても過言ではないでしょうか。



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アラレちゃんをギャングに見立てたカットなのですが、持っているサブマシンガンが「H&K MP5K」という連載当時の1980年代初頭では最新鋭の銃で、昔ながらのギャングのスタイルでありながら、持っている銃は最新鋭という鳥山明ならではのギミックの効かせ方だと思います。



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なんとも牧歌的な風景でしょうか。第2次世界大戦中に戦車、飛行機問わずに数多くの敵を餌食にしてきた
「8.8 cm FlaK 36」という高射砲です。その死神のような出で立ちに我らがアラレちゃん一行がブランコにしている、何ともニンマリな絵ですね。呆気にとられている兵士さんたちも鳥山テイスト満載な表情です。

そして、この元ネタの写真はこちらではないでしょうか?

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タミヤのプラモデルで発売していたこの高射砲、ロングセラーでまだ発売しているというから驚きです。飛行機や戦車といったメカメカしているものより、こういう「現場」的なプラモデルが好き!っていうのは全く同感です。「プラモは現場っしょ!」て思う人がたくさんいて嬉しいですね。

そんな鳥山明のプラモ熱の結実が、1986年の第14回人形改造コンテスト金賞受賞という快挙ではないでしょうか。このコンテストは田宮模型が主催する、タミヤの35分の1のミリタリーフィギュアを改造するというものなのですが、原型をはるかに超える造形で、数々の作品を彼自身応募しています。銅賞なども受賞したりして、造形でも非凡な才能を発揮しています。写真は金賞を取った作品「ハイヨ~シルバー」です。凄すぎます。

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③パロディー

パロディーは彼が最も得意とするところではないでしょうか?「描いてみた」というより、作品の中にシレ~と混ぜてみたというのが正しいのではないでしょうか。さらに、その混ぜ方だったり、描かれ方に彼自身のギャグギミックがたくさん詰まっていて、格好よさをさらに際立たせています。


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これは何の変哲もない「MINI」なのですが、ナンバープレートに注目。「R2-3PO」となっています。当時、彼の創作に多大な影響を与えた「スターウォーズ」の登場人物「R2-D2」「C-3PO」の名前をとっています。他にもスターウォーズが影響を与えているのは、
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これはマシリト博士の工房兼秘密基地なのですが、前述の「R2-D2」の頭でできています。あれが基地に見えるとは・・適当か狙いか。違和感なく見ていた私みたいな人もいるでしょうしね。あと、他にも

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これは「缶蹴り大会」でのひとコマ。アラレちゃんがちょこんと蹴った缶が遥か彼方へ飛んでいった時に取りに行った千兵衛さんの乗り物ですが、また「R2-D2」のD2の文字が・・。しかも、「speed」とかかっている徹底ぶり。週刊連載で締切に追われているはずなのに、それをきっちり楽しんでいますね。さらに端のパンダが可愛い。あとこんなのも。

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どんだけスターウォーズ好きやねんって言ってしまいますね。


パロディーと言えば、今となってはかなり貴重なカットがこちら。

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アラレちゃんとガッちゃんがペンギン村を疾走するというのについてきた面々のなかに「シャアザク」が混ざっています。鳥山明が描くガンダム、しかもシャアザク。しかも、かなりフォルムが格好いい。もはやオリジナルとも言えますね。

ガンダムを始めとするメカものアニメにも大きな影響を受け、それを取り込んだメカも出ています。

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当時のメカものアニメは彼のギャグマンガには先鋭すぎるのですが、彼はそれをうまく「いなして」取り込んでいます。2枚目の「リブギコ」はモビルスーツテイストなのですが、武器が殺虫剤だったり、名前がゴキブリを逆に読んだり、操縦しているのがホイ・クエンだったりとかなりホッコリしてしまいます。



④オリジナル

ここがよく見る部分だと思うのですが、鳥山明は先鋭的なオリジナルキャラやメカデザインではなく、日常の決して暴力的でないものが悪者だったり、悪の権化のようなものが逆に平和的だったりとごくごく自然体なデザインが特徴です。例えば千兵衛さんちの電話は昔の電話のスタイルをしていますが、「千兵衛電話だぞ~」と叫んでくれたり、この写真のように蛇口が象さんになっていたり、

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あと、かなりの合理主義者なところもデザインから読み取れます。アカネちゃんの家は喫茶店。それ自体がポッドになっている。銀行は金庫、タバコ屋は

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何かタバコ屋や銀行は世の中にある既存のデザインだというもっともらしいのが嫌なんでしょうね。それよかペンギン村なんだから全部こういう家や建物なの!という徹底ぶりは後のドラゴンボールの世界観の広がりに活きていると思います。


かと言って、先鋭的なものが少ないわけではありません。ドラゴンボールではほぼオリジナルなメカデザインで、こういうメカを描き続けることによって、彼の中のドラゴンボール世界のメカデザインが自然と統一されていったのだと思います。その断片は、このアラレちゃん世界でも垣間見えます。


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特に1枚目はその後のドラゴンボール世界ではスタンダードなデザインの原型とも言えるのではないでしょうか。



最後に鳥山明メカデザインといえば忘れてはいけないのが「キャラメルマン」です。

都合9号まで作られたこのマシリト博士が千兵衛さんとアラレちゃんを追い落とすためのロボット(一部明らかにロボットではないのが混ざっていますが・・)集団は、鳥山明作品では長期レギュラーメカですね。その中でも印象的なのは「キャラメルマン1号」です。

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この鉄人28号のようなフォルムを遠隔操作でなく中で操縦して、お腹の窓から顔が出ているというおマヌケっぷりは、何とも彼らしいデザインなのではないでしょうか。その後アラレちゃん一党に負けるたびに、進化をしていってオボッチャマくんことキャラメルマン4号で最終進化系を迎えたと思えば、5号はただの千兵衛さんのハリボテだったり、

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いつも期待をいいように裏切ってくれています。それにしても、このハリボテをキャラメルマン5号と呼ぶなんて・・・。



いかがでしたか、今回の鳥山明のメカデザインは。

鳥山明作品にいつまでも、そして当時からも魅了されるのは、彼のギミックが彼以外考えなかったことだからではないでしょうか?後々こういう風に考察は出来ても、これを白紙の原稿用紙から作り出す想像力は、これからそういう漫画家が出てくるか甚だ疑問なところもあります。このようにメカを愛し、それが日常にすぐ彼のペン先から溶け出す。これこそが本当の魅力なのではないでしょうか?そして、もっとびっくりする話があります。
「鳥山明はあまり作画用の資料を持っていない」
インタビューで語っていたお話です。こんなにいっぱいのデザインを一度や二度見ただけで描ける、いや取り込める。本当にあなたにはかないませんよ。
by manga_do | 2012-10-07 00:00 | 日曜マンガ博物館 | Comments(0)
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