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アメ村マンガ研究所

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山上たつひこandいがらしみきお

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羊の木

(イブニング連載中)
(山上たつひこ・いがらしみきお・講談社・680円)


<あらすじ>
法務省が新たな元受刑者の更生プログラムを世間には内緒で、発動させた。それは刑期を終えた元受刑者を地方都市に移住させ、そこで就職させるというものだった。ある地方都市魚深市の市長、鳥原秀太郎のもとに法務省の役人から依頼が届く。一般市民に一切知らせず元受刑者を引き受けてほしいというものだった。しかも、11人も・・。

ギャグマン漫画の神様的存在、山上たつひこと同じくギャグマンガ、人間ドラマと幅広く活躍をみせるいがらしみきおが強力タッグを組んだのがこの作品です。山上たつひこが原作を書き、いがらしみきおがペンを入れる。マンガが好きな人にとってはたまらない組み合わせだし、絶対人に話してしまう「事件」です。あらすじにも書いた、全体的に支配する重たい空気を、山上流のギャグでコーティングして、いがらし流の閉塞感にも似た画に戻す。それが毎コマ、毎ページ続いているという感じでしょうか。

罪人(ここでそういう表現を使っているので横滑りします)が、しかもかなりの凶悪犯ばかりが、市政の更生プログラムの中で、全く何も事情を知らされていない市民(これも誤解を生む表現です、ご勘弁を)と一緒に暮し、仕事をし、打ち解けようとする。山上たつひこがあとがきで「ヤクザの抗争で、三人日本刀でぶった切った奴でも同じ部屋にいられる。でも、借金を断られた腹いせに相手を絞殺した人物には百メートル以内に近づきたくない」と書いています。生理的な感覚であると断りつつも、山上たつひこはそこに法律の限界、人を殺すという「個人体験」を法律ではふるい分けることができない、生理的感覚までは区別することができないと書いています。そこがこの物語の出発点だったとも。

私は人を殺すということは、どんな状況下であっても許されることではないと考えています。しかし、このマンガの中で描かれている登場人物は、実際「元受刑者」として社会の一員となって生活をしている、し続けている存在であります。マンガでなくても、実際の世界で普通にある光景であるはずです。その差に何の違いがあるのか、このマンガを読んで今までに味わったことのない感覚が入ってくるのがよくわかります。そうです、リアルに考えて、想定しないと人間は何も考えないということです。「死」と「生」に携わったことのある人間と「死」も「生」も手の中にあったことが無い私たちは、どう彼らと向き合って「整理」していくのか。そのことだけでも考えられるいい意味での本となりました。
by manga_do | 2011-11-23 09:03 | 1巻目にしてオモシロイ | Comments(0)
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