山下和美音楽短編集
コンチェルト・ノクターン
(山下和美・講談社・各720円)
山下和美の作品で「音楽」を扱った作品や描き下ろしを集めた作品集です。主に「天才柳沢教授の生活」「不思議な少年」からのセレクションですが、短編集の中でも名作の呼び声高い「ROCKS」や今回の短編集に合わせての描き下ろしなど、山下和美ファンにたまらない2作品です。特に帯に「イヤホンはいりません」「ボリュームを気にせずに」というキャッチは本当に音が聞こえてくるような錯覚に陥るほどの的を得た説明だと思います。なんかわかりませんが聞こえますよ、本当に。
コンチェルトに収録されている「ROCKS」はリストラにあった中年男性の悲哀を描いたもの・・というのではなく、大人ってこういうことなのさということが本当に伝わってくる名作です。音だけでなく、生き方も伝わってきます。こういうのを見ていると短編ってすごく難しいですし、楽しいなと思いますね。伝えなくてはいけない情報を慌てずゆっくり整理して描き出す。短編集の真骨頂ですね。