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アメ村マンガ研究所

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斜めに見る

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へうげもの
13巻
(週刊モーニング連載中)
(山田芳裕・講談社・570円)


アニメ化され、巻数も13巻と益々驀進中のセンゴク物欲「乙」マンガ。太閤豊臣秀吉が逝去し、「秀吉後」の主導権争いに今まさに日本が二つに割れそうになるところのお話です。古田織部も自ら確立しつつある、「甲」なものを求める生き方より、自分の世界が作れる「乙」な世界に埋没しようとして、作庭や今までの形にとらわれない器づくりをもっと追い求めるようになります。

そんなときにおこった、日本を二分する秀吉亡き後の徳川vs反徳川の権力争い。歴史でも有名な「天下分け目の関ヶ原の戦い」の2年前からは数か月前の部分が描かれています。「武」をもって自分たちの領地を広げ、功名を上げようとする者にとって、この争いはチャンスであり、ピンチです。しかし、数寄を是として、己の美的感覚と「趣味」をもって、この世の中に安寧と「楽」をもたらそうと思っているもにとっては、この争いは自分たちの価値を無に帰させてしまう一大事です。

古田織部はそんなときこそ数寄ものは、こんな争いを「斜めに見ることができる」と言い放ちました。どちらについても大差ないわけですし、じぶんたちこそ今をそれぞれの感覚で乗り切ったり、楽しむことができるという考えです。

暴力と搾取を主としている戦国時代にあって、このような感覚こそ今の時代にもあっているのではないかと思います。ともすれば、ギャグ漫画の体裁をなしているのでは?と思える、この作品。全体の流れでは、そのような部分よりも、人が持っている清と濁、苦と楽、生と死がこんなにも溢れている漫画は近年ないのではないかと思います。アニメもやっていますが、本来伝わるべき、いやマンガでもまだまだ伝わり切っていない、作者が言いたいこのお話の「擬音」みたいなところは、コミックの方がまだ伝わっているのではないかと思います。

それと関ヶ原の戦いですが、今までも歴史の本、ドラマなどで散々やっていますが、原因と結果という側面から、原因をこれほど多角的に新章的に描かれているものもないと思います。ひとはとかく結果だけを見たくなりがちですがね。そういう読み方でも今回の13巻は楽しいですね。
by manga_do | 2011-07-24 10:11 | マンガ紹介
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